消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
症例
限局性過形成性変化を伴った慢性胃炎の1例
鈴木 義之足立 ヒトミ根本 行仁池田 みどり黒川 きみえ河上 牧夫
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1993 年 43 巻 p. 138-142

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抄録

 症例は49歳女性。心窩部痛を主訴に当科を受診し,胃内視鏡検査で胃体部大彎に島状の隆起部が散在して認められ,その他の部位には高度萎縮所見がみられたため,精査入院となった。入院時現症では上腹部皮下にウズラ卵大の腫瘤を触知する以外,特記すべきことなし。検査所見では貧血や白血球の増加などなく,血清ガストリン値は329と高値,ペプシノーゲンⅠ,Ⅰ/Ⅱは低値を示し,胃液は無酸,さらにビタミンB12は正常,PCA(-)IFA(-)であった。胃X線検査で胃体中上部の大彎を中心に島状の隆起性変化がみられた。胃内視鏡の再検では入院前と同様の所見で,コンゴーレッドテストで胃体中部大彎の島状隆起部のみに変色がみられた。生検組織検査でも島状部は胃底腺の過形成が認められ,周囲は高度の萎縮所見であった。また腹部腫瘤の摘出検索では脂肪腫で,胃炎との関連はなかった。以上,限局性過形成性変化の多発を伴う高度萎縮性胃炎の1例を経験し,胃炎の進展様式を考える上で,示唆に富む症例と思われ報告する。

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© 1993 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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