消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
症例
出血性多発性球後部潰瘍の1例
松村 修志石井 俊也中島 俊一井上 博和石塚 俊一郎小沢 政成坂井 謙一岸 秀幸長谷川 毅前谷 容五十嵐 良典酒井 義浩
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1993 年 43 巻 p. 188-191

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抄録

 症例は65歳男性。64歳時より糖尿病性腎不全のため人工透析を導入した。当院眼科での糖尿病性網膜症術後より,発熱と頻回の下痢があり,当科を受診した。偽膜性大腸炎と診断し,塩酸バンコマイシンの投与を開始したが,経過中に心筋梗塞を併発し,ヘパリンを追加投与した。数日後大量下血を認め,Hb 4.8g/dlまで低下した。上部消化管内視鏡で十二指腸下行部入口部前後壁,主乳頭近傍とその肛門側より下十二指腸角に達する4個の潰瘍を認めたが,大腸を含め出血源は不明であった。大量輸血によってのみ貧血は改善され,腹部血管造影でも出血源を同定しえなかった。再下血の直後に再検したところ,主乳頭より下十二指腸角に達する巨大潰瘍が形成され,新鮮出血を認めたので内視鏡的処置を反復して止血した。重篤な病態を背景にした大量出血を伴う球後部潰瘍は,局所粘膜の循環障害が関与しているものと考えられ,側視鏡を用いた様々な止血操作を駆使することが有効であった。

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© 1993 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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