症例は69歳男性。上部消化管内視鏡検査にてファーター乳頭部付近に発赤,びらんを有する亜有茎性の腫瘤が発見され,組織所見には高度の異型性をもつ腺腫であった。低緊張性十二指腸造影にて,表面不整,球状の隆起性病変(27×20mm)が認められた。血管造影では血管新生,腫瘍濃染像は認めなかった。以上よりファーター乳頭部癌が疑われ,開腹術が施行されたが,手術所見では乳頭開口部より2-3cm口側に,20×18×15mm大の有茎性ポリープが乳頭開口部を覆う形で存在しており,乳頭近傍に発生した十二指腸腫瘍と診断し,ポリープ摘出術を施行した。病理組織学的には,粘膜内に限局した乳頭腺管腺癌(m,ly0,v0)と診断された。断端に異型細胞はみられず,腺腫内癌の所見であった。術後経過は良好で,14ヵ月後の現在も再発はみられていない。早期十二指腸癌は比較的まれな疾患であり,若干の文献的考察を加え報告した。