消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
症例
びまん浸潤型大腸癌との鑑別に大腸超音波内視鏡が有用であった虚血性腸炎の1例
馬場 俊之秋田 泰井上 徹也山田 浩隆西田 均吉川 望海三田村 圭二
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1993 年 43 巻 p. 224-226

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抄録

 症例は66歳女性。腹痛,粘血便を主訴に来院し,腹膜刺激症状と炎症所見を認め,入院となった。入院時の注腸X線検査では,S状結腸に淡いバリウム斑を伴う辺縁不整な狭窄像を認め,大腸内視鏡検査でも同部位に易出血性の地図状潰瘍を伴った狭窄が認められた。虚血性腸炎とびまん浸潤型大腸癌の鑑別に苦慮したが,層構造の状態を把握することにより両者の鑑別が可能と考え,大腸超音波内視鏡検査を施行した。病変部の腸管壁は全層性に肥厚し,第1層-4層にかけて低エコー化していたが,層構造は保たれていた。生検所見でも悪性細胞は認められず,びまん浸潤型大腸癌は否定的であり,虚血性腸炎と診断した。大腸超音波内視鏡検査は腸管壁内外の状態の描出が可能であるが,層構造の変化を観察することは腸管の狭窄病変の良性悪性の鑑別に有用であると考えられた。

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© 1993 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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