症例は40歳女性。平成2年10月頃より便に鮮血の付着をみたが放置していた。症状が改善しないため,平成3年9月当科を受診し,注腸造影および大腸内視鏡検査にて,直腸に直径15mmの円形隆起を認めた。病変は正色調で,表面は凹凸不整,易出血性であった。組織学的に核小体の鮮明な大小不同の核を有する細胞がシート状に増殖し,Grimelius染色強陽性,脈管侵襲および神経侵襲を認めることも考え合わせ,内分泌細胞癌と診断された。大腸内分泌細胞癌はまれな疾患で,内視鏡的にsm浸潤の分化型腺癌あるいは定型的カルチノイドなどと鑑別が困難である。しかし本症は,これらに比して予後は極めて悪いとされており,生検組織での正確な診断が重要であると考えられたため報告した。