症例は55歳男性。発熱,黄疸を主訴に入院した。腹部超音波,腹部CTスキャンにて胆管拡張が認められ,経皮経肝胆管ドレナージを施行し,下部胆管に閉塞を認めた。十二指腸内視鏡では,乳頭部を中心に凹凸不整な小結節様の隆起病変を全周性に認めた。生検にて乳頭部は腺癌で,その周囲は絨毛腺腫と診断された。手術後の病理所見では,十二指腸病変は乳頭を中心に長軸方向6cmの範囲で,全周性に絨毛状増殖を示し,割面では乳頭部の粘膜病変に隣接して,乳頭部胆管に主座をおく腫瘤を認めた。組織学的には十二指腸粘膜病変は悪性化を伴った絨毛腺腫で,乳頭部の腫瘤は浸潤性増殖を示す中-低分化腺癌であった。またCA 19-9での免疫染色で,両者は明瞭に分離された。以上より本症例は,腫瘍が十二指腸粘膜,乳頭部にそれぞれ存在し,その組織型,免疫染色の違いにより,Vater乳頭部癌に悪性化十二指腸絨毛腺腫が衝突した重複癌と考えられた。