症例は73歳,男性。突然の大量下血(鮮血)により入院した。下部消化管内視鏡検査にてS状結腸に凝血塊を伴う潰瘍性病変を認め,拍動を伴っていた。病変部は凝血塊のため出血点を確認できず,内視鏡的に止血困難と判断され,IVR目的に腹部血管造影検査を施行した。左内腸骨動脈瘤を認め,そのS状結腸への穿破が強く疑われたため,左内腸骨動脈瘤空置術を施行した。術中,穿破部は肉眼では確認できなかったが,術後下血を認めなかった。その後,一時的人工肛門造設術を施行し,潰瘍は約3カ月で瘢痕化した。本邦での報告は少なく,本症例は内視鏡検査による病変部の経時的変化を観察しえた貴重な症例であり,また下血の鑑別診断の1つとして考慮することも大切であると考えられた。