1998 年 52 巻 p. 70-73
症例は54歳男性。黒色便を主訴に当科を受診。貧血(Hb6.2g/dl),低蛋白血症(5.7g/dl)を認め,精査治療目的で入院となった。緊急上部消化管内視鏡検査にて,胃体下部大弯に山田Ⅲ型の粘膜下腫瘍を認めた。大きさは約25mmで,凝血塊が付着した潰瘍を伴っていた。また,胃体部には柔らかい皺襞の肥厚と多量の粘液付着がみられた。生検にて腫瘍はカルチノイドと診断されたが,巨大皺襞に悪性所見はみられなかった。胃カルチノイドを合併したメネトリエ病の診断にて,胃全摘術を施行した。切除標本の病理学的検索では,腫瘍は異型の乏しい核を有する細胞が小結節状の配列を示すカルチノイドで,大きさは22×22mm,深達度はsmであった。また,胃底腺領域の粘膜は著明に肥厚し,腺窩上皮の囊状拡張を伴う過形成や固有胃腺の萎縮の所見が認められた。