消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
症例
上部消化管造影検査中に発生し,粘膜下にバリウム貯留を見たMallory-Weiss症候群の1例
若林 寛二岩男 泰前田 憲男山本 章二郎斎藤 英胤石井 裕正杉野 吉則金井 隆典渡辺 守日比 紀文
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1999 年 54 巻 p. 77-80

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抄録

 症例は72歳,女性。平成10年1月9日上部消化管造影検査を受けた。胃粘膜の高度萎縮とそれに伴う進展不良以外は異常所見はなかったが,嘔吐反射直後より穹隆部粘膜下にバリウムの貯留が観察された。特に症状はなく,いったん帰宅するも,同日夕刻より発熱と少量の吐血を認め緊急入院となった。腹部理学所見に異常はなく,補液,抗生剤による保存的治療で経過をみた。第3病日には解熱,free airも消失したが,バリウムの貯留は残存した。第10病日の内視鏡検査で,噴門部から穹隆部の後壁よりに数cmにわたる線状の裂傷と,バリウムが透見される粘膜下腫瘍様の隆起を認めた。本症例は発泡剤による胃内圧上昇と,嘔吐反射によるMallory-Weiss症候群と考えられるが,胃粘膜萎縮が強い高齢者に対しては,比較的侵襲の軽いとされている造影検査においても,十分な配慮と注意が必要と考えられた。

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© 1999 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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