日本歯周病学会会誌
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原著
ヒト歯槽骨骨膜由来細胞凝集塊(スフェロイド)の微細構造学的形態の経時的変化
田胡 和浩光家 由紀子東 一善宗正 憲和根本 賢治辻上 弘菅谷 彰高橋 理出口 眞二
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2012 年 54 巻 2 号 p. 155-166

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抄録

現在,歯周疾患により喪失した歯周組織を再生のために種々の研究が行われている。我々は,細胞・足場・成長因子を兼ね備えた細胞凝集塊(スフェロイド)をヒト歯槽骨骨膜由来細胞(HABPCs)を用いて作製し,歯周組織再生の臨床応用への可能性を検討した。下顎の歯周外科処置時に骨膜片から採取した細胞をヒト歯槽骨骨膜由来細胞とし,10 日間平面培養後,細胞をシート状のまま剥離し遠心沈殿させスフェロイドとした。スフェロイドは,1,3,7,14 日間培養後,微細構造学的,免疫組織化学的検索を行った。スフェロイド中の細胞の分布は,形成 1 日目では,ほぼ均一であったが,経時的に,細胞の形状や配列の差異で,表層,中層,深層の3 層に区別できた。また,7 日目以降,深層部の細胞数は減少し,14 日目では,中層を構成する細胞数も減少した。細胞数が減少した部位では,広い細胞間隙が観察された。コラーゲン線維は,細胞間隙を埋めるように深層部より増加し,順次,中層部,表層部と拡大していった。細胞質中の高電子密度の顆粒やオステオポンチン(OP),オステオカルシン(OC)陽性反応も同様の傾向を示した。これらのことから,スフェロイド内の細胞が経時的に深層から表層にかけて分化していく可能性が示唆された。ヒト歯槽骨骨膜由来細胞スフェロイドは,歯槽骨内への移植により骨再生が起こる可能性が示唆された。日本歯周病学会会誌(日歯病誌)54(2):155-166, 2012

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© 2012 特定非営利活動法人 日本歯周病学会
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