日本歯周病学会会誌
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臨床報告
シクロスポリンAおよびシルニジピンによる歯肉増殖を伴う 慢性歯周炎の一症例
色川 大輔藤田 貴久山本 茂樹増田 浩之齋藤 淳
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2014 年 56 巻 1 号 p. 72-81

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抄録

免疫抑制剤およびカルシウム拮抗薬が関連した歯肉増殖を発症し,非外科的処置にて治療し改善をみた症例について報告する。患者は 34 歳女性で歯肉の腫脹を主訴に来院した。腎移植のため 1 年 3ヶ月前よりシクロスポリン A を,合併症の予防ためシルニジピンとバイアスピリンを服用しており,高度の歯肉増殖を認めた。 慢性歯周炎を併発しており,プロービングデプス(PD)は平均 6 mm で,4-6 mm の部位は全体の 31%,7 mm 以上の部位は 60% であった。歯周基本治療と再評価後に行った再スケーリング・ルートプレーニングにより,口腔清掃状態および歯肉炎症の改善とともに歯肉増殖は著明に改善し,PD 5 mm 以上の歯周ポケットはなくなった。 サポーティブ・ペリオドンタルセラピーに移行してから 10ヶ月が経過したが,歯周組織は安定した状態を維持している。今回の歯肉増殖は炎症による浮腫性の腫脹も伴った歯肉増殖症であると思われた。そのため炎症の原因であるプラークや歯石の除去,口腔清掃指導を徹底的に行い歯肉増殖の改善に成功した。今後もプラークコントロールの維持に留意していく必要がある。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(1):72-81,2014

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© 2014 特定非営利活動法人 日本歯周病学会
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