露出した根面へのプラークの付着は歯周炎だけでなく,歯根面う蝕の原因ともなり歯周病患者を管理していく上での大きな障害の 1 つである。知覚過敏抑制材であるフルオアルミノシリケートガラス分散液(ナノシール
®)は歯根面上にナノ粒子層を形成し耐酸性を向上させ,歯根表面の電荷を変えることによりプラークの沈着を抑制できることが考えられる。 本研究ではナノシール
®を象牙質表面に応用した場合のプラーク付着抑制効果について調べることを目的とした。牛歯片上で
S. mutans を 48 時間培養し,水洗後にバイオフィルム形成状態を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。さらに,前歯部に歯根露出歯を有する患者(10 名)にナノシール
®を塗布し,2 週,4 週間後の根面へのプラーク付着状態についてランダム割付 2 重盲検法で評価した。 その結果,ナノシール
®未塗布牛歯片では明らかなバイオフィルムの形成を認めたが,ナノシール
®塗布部では細菌が散在して認められた。歯根露出を有する患者のプラーク付着率はナノシール
®群において低い傾向を示したが有意差を認めなかった。
in vitro においてナノシール
®のバイオフィルム付着抑制効果が示されたが,今回の実験では水洗後の状態を見ていることから,バイオフィルムと歯面との付着力が落ちていたことが考えられる。 今後は
in vivoにおけるプラーク付着力について検討していく予定である。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(1):25-31,2014
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