日本歯周病学会会誌
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56 巻, 1 号
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巻頭言
総説
ミニレビュー
原著
  • 黒瀨 慎太郎, 白川 哲, 宮崎 綾子, 鈴木 琢磨, 千見寺 亮吉, 八島 章博, 五味 一博
    2014 年 56 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2014/04/11
    公開日: 2015/02/18
    ジャーナル フリー
    露出した根面へのプラークの付着は歯周炎だけでなく,歯根面う蝕の原因ともなり歯周病患者を管理していく上での大きな障害の 1 つである。知覚過敏抑制材であるフルオアルミノシリケートガラス分散液(ナノシール®)は歯根面上にナノ粒子層を形成し耐酸性を向上させ,歯根表面の電荷を変えることによりプラークの沈着を抑制できることが考えられる。 本研究ではナノシール®を象牙質表面に応用した場合のプラーク付着抑制効果について調べることを目的とした。牛歯片上でS. mutans を 48 時間培養し,水洗後にバイオフィルム形成状態を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。さらに,前歯部に歯根露出歯を有する患者(10 名)にナノシール®を塗布し,2 週,4 週間後の根面へのプラーク付着状態についてランダム割付 2 重盲検法で評価した。 その結果,ナノシール®未塗布牛歯片では明らかなバイオフィルムの形成を認めたが,ナノシール®塗布部では細菌が散在して認められた。歯根露出を有する患者のプラーク付着率はナノシール®群において低い傾向を示したが有意差を認めなかった。in vitro においてナノシール®のバイオフィルム付着抑制効果が示されたが,今回の実験では水洗後の状態を見ていることから,バイオフィルムと歯面との付着力が落ちていたことが考えられる。 今後はin vivoにおけるプラーク付着力について検討していく予定である。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(1):25-31,2014
  • 岡野 千春, 大橋 顕二郎, 鈴木 桃子, 小山 朱美, 高井 英樹, 小方 頼昌
    2014 年 56 巻 1 号 p. 32-38
    発行日: 2014/04/11
    公開日: 2015/02/18
    ジャーナル フリー
    エナメルマトリックスタンパク質は,歯根膜中の未分化間葉系細胞の分化と増殖を促進し,歯周組織再生を誘導することが多数報告されている。日本大学松戸歯学部付属病院では,2008 年 4 月にエムドゲイン®ゲルを用いた「歯周外科治療におけるバイオ・リジェネレーション法」が先進医療として厚生労働省より認可された。 本研究では,エムドゲイン®ゲルを用いた歯周組織再生療法における臨床パラメーターの改善度と X 線写真での治療効果を比較検討した。本先進医療を実施し,術後 6 か月経過時に歯周病検査を行った 57 名の 109 部位について,プロービングポケット深さ(PPD),臨床的アタッチメントレベル(CAL),Bleeding on probing(BOP)および X 線写真上での骨欠損深さを計測した。術前の平均 PPD は 6.4±1.3 mm,平均 CAL は 7.8±1.9 mm,BOP は 74.3%,骨欠損深さは 2.6±2.3 mm であった。術後 6 か月経過時では,PPD は 3.4±0.8 mm,CAL は5.4±1.7 mm,BOP は 31.2%,骨欠損深さは 1.8±1.6 mm であり,有意な改善が認められた。CAL の獲得は109 部位中 93 部位で認められ,CAL 獲得量は 2.0±2.1 mm,術後 6 か月の骨欠損改善率は 20.5±49.1%であった。臨床的パラメーターの改善度およびX線写真での歯槽骨の再生量は,過去の報告と同程度であった。以上の結果から,エムドゲイン®ゲルの歯周組織再生療法への応用は,臨床的に有意な改善効果を示した。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(1):32-38,2014
  • 笠井 俊輔, 富田 幸代, 深谷 千絵, 井原 雄一郎, 齋藤 淳, 中川 種昭
    2014 年 56 巻 1 号 p. 39-48
    発行日: 2014/04/11
    公開日: 2015/02/18
    ジャーナル フリー
    急性症状を呈している慢性歯周炎患者にシタフロキサシンを経口投与し,その臨床効果と細菌学的効果を検討した。慢性歯周炎患者30 名の急性症状部位を実験群とし,慢性部位を対照群とした。シタフロキサシン投与前と投与後6~8 日に臨床所見の診査と歯肉縁下プラークを採取し,PCR-Invader 法で歯周病原細菌4 菌種の検出を試みた。その結果,シタフロキサシンの投与により,臨床所見の評点評価において,急性部位では動揺度以外のすべての項目で有意に改善した。効果判定では疼痛と排膿の項目で「著効」の判定だった。投与前,急性部位からはTannerella forsythiaTreponema denticola が,慢性部位ではT. forsythiaPorphyromonas gingivalis が多く検出された。投与後P. gingivalis,T. forsythia は有意に減少した。急性部位(A),慢性部位(C) ともに除菌率はP. gingivalis の値(A 群:72.2%,C 群:100%)が最も高かった。ついでT. forsythia , T. denticola の順であった。以上の結果より,シタフロキサシンの経口投与は慢性歯周炎の急性症状に対し高い効果があることが示唆された。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(1):39-48,2014
  • 五味 由季子, 長﨑 満里子, 三澤 絵理, 梶山 創太郎, 斉藤 まり, 長野 孝俊, 井上 孝二, 五味 一博
    2014 年 56 巻 1 号 p. 49-56
    発行日: 2014/04/11
    公開日: 2015/02/18
    ジャーナル フリー
    インプラントは広く臨床に応用され,インプラントを有する患者数も増加している。インプラントには生体安定性に優れたチタンが用いられているが、最近になりフッ素イオンの存在下ではチタンの耐食性が低下し腐食することが報告されている。特に食物やプラークによる pH の変化が生じる口腔においてフッ素が存在するとチタンの腐食が進行すると考えられる。しかし,市販の歯磨剤の多くはう蝕の予防を目的にフッ化物が添加されている。本研究ではフッ素の存在に伴うリスクを排除し長期間に渡って使用できるインプラント専用の歯磨剤の開発を目的とし,試作フッ化物未含有歯磨剤および洗口剤のチタン合金および純チタンに対する影響を共焦点レーザー顕微鏡と走査型電子顕微鏡を用いて市販のフッ素含有歯磨剤およびフッ素塗布剤と比較検討した。その結果,9000 ppm を超えるフッ素を含有するフッ素塗布剤では著しいチタンの腐食が認められた。1000 ppm 以下のフッ素含有歯磨剤においてもコントロールと比較して有意に表面が荒れることが示された。さらに酸性環境下でフッ素が存在すると腐食が進み表面粗さが進行すると考えられた。また,純チタンはチタン合金より腐食傾向が強かった。一方,フッ素未含有の試作歯磨剤および洗口剤ではチタン表面の腐食はほとんど認められなかった。 以上より試作歯磨剤および洗口剤はインプラントを口腔に保有する患者に対して有用であり安全性が高いと考えられた。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(1):49-56,2014
症例報告レビュー
臨床報告
  • 吉沼 直人, 好士 亮介, 好士 理恵子, 川本 亜紀, 佐藤 秀一, 菅野 直之, 伊藤 公一
    2014 年 56 巻 1 号 p. 65-71
    発行日: 2014/04/11
    公開日: 2015/02/18
    ジャーナル フリー
    広汎型侵襲性歯周炎患者に対し,抗菌療法を併用した歯周治療を行い初診時より18年間経過した症例を報告する。歯周基本治療時に予後不良と判断した歯(36)に手用スケーラーによる SRP,根分岐部には根分岐部用チップを用いた超音波デブライドメントを行った。その後,同部位に歯科用塩酸ミノサイクリン軟膏を 1 週に 1 回,計 4 回連続投与した。歯周基本治療後の再評価時,36 の PPD は 3 mm 以下に改善された。BOP を有するPPD 4 mm 以上の部位には歯周外科治療を行った。再評価後,PPD は全歯 3 mm 以下となったため SPT に移行した。SPT 期間中,来院時のプロービング時に 3 回連続で出血した歯に対し細菌検査を行った。全被験歯にAggregatibacter actinomycetemcomitans (A.a.)が検出されたため,超音波スケーラーによる機械的デブライドメントとアジスロマイシンを用いた経口抗菌療法を行ったところ,術後15ヵ月目の細菌検査まで A.a.は検出限界以下となった。本症例より,広汎型侵襲性歯周炎患者の治療に機械的デブライドメントと抗菌療法を併用することにより歯周炎の進行と再発を長期にわたり予防できる可能性が示された。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(1):65-71,2014
  • 色川 大輔, 藤田 貴久, 山本 茂樹, 増田 浩之, 齋藤 淳
    2014 年 56 巻 1 号 p. 72-81
    発行日: 2014/04/11
    公開日: 2015/02/18
    ジャーナル フリー
    免疫抑制剤およびカルシウム拮抗薬が関連した歯肉増殖を発症し,非外科的処置にて治療し改善をみた症例について報告する。患者は 34 歳女性で歯肉の腫脹を主訴に来院した。腎移植のため 1 年 3ヶ月前よりシクロスポリン A を,合併症の予防ためシルニジピンとバイアスピリンを服用しており,高度の歯肉増殖を認めた。 慢性歯周炎を併発しており,プロービングデプス(PD)は平均 6 mm で,4-6 mm の部位は全体の 31%,7 mm 以上の部位は 60% であった。歯周基本治療と再評価後に行った再スケーリング・ルートプレーニングにより,口腔清掃状態および歯肉炎症の改善とともに歯肉増殖は著明に改善し,PD 5 mm 以上の歯周ポケットはなくなった。 サポーティブ・ペリオドンタルセラピーに移行してから 10ヶ月が経過したが,歯周組織は安定した状態を維持している。今回の歯肉増殖は炎症による浮腫性の腫脹も伴った歯肉増殖症であると思われた。そのため炎症の原因であるプラークや歯石の除去,口腔清掃指導を徹底的に行い歯肉増殖の改善に成功した。今後もプラークコントロールの維持に留意していく必要がある。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(1):72-81,2014
  • 松澤 澄枝, 仲谷 寛
    2014 年 56 巻 1 号 p. 82-86
    発行日: 2014/04/11
    公開日: 2015/02/18
    ジャーナル フリー
    本報では,自閉症を伴う侵襲性歯周炎患者に対し,包括的な歯周治療を行い,長期間,良好なメインテナンスを継続している 1 症例について報告する。 患者は,23 歳女性で歯肉の腫脹,歯列不正を主訴として来院した。口腔内は,全顎にわたり著しい歯肉腫脹,発赤,プラークおよび歯石の沈着が認められた。治療計画立案時は,自閉症を考慮し,非外科的歯周治療とした。通常より頻回の口腔衛生指導を行った結果,プラークコントロールは上達し,パニックなどの問題行動もなく歯周基本治療を進めることができた。そのため,歯周外科,矯正治療を含む包括的治療へと計画を変更した。患者は,現在まで 10 年のメインテナンスが良好に経過している。 自閉症患者ということで,妥協的治療を選択するのではなく,患者の特徴や反応を観察していくことで,包括的歯周治療も可能であり,その過程において歯科衛生士の役割は非常に大きいと思われる。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(1):82-86,2014
  • 山本 やすよ, 植原 俊雄
    2014 年 56 巻 1 号 p. 87-94
    発行日: 2014/05/15
    公開日: 2015/02/18
    ジャーナル フリー
    不正咬合を主訴として来院した重度慢性歯周炎患者に対して歯周−矯正治療を含む包括的治療によって 14 年が経過した症例を報告する。患者は 34 歳女性,近隣の歯科医院でう蝕治療をうけた後,数年間歯科治療を受けたことはなかった。う蝕と歯肉出血とともに口唇が閉じられなくなったことが気になり来院した。臨床所見は全顎的に歯肉の腫脹および出血がみられ,PCR 100%,BOP 97%,PD 4 mm 以上が全部位,動揺度 2〜3が8歯であった。また,デンタルX線写真では,高度な歯槽骨吸収と歯石沈着がみられ残根も認められた。まず,患者には自身の口腔状態を説明し関心をもってもらうことから始め,口腔衛生指導と歯周基本治療を行った。プラークコントロールは改善し,歯周−矯正治療,口腔機能回復治療へ順調に治療をすすめることができた。3〜4 カ月毎の SPT へ移行し数年が過ぎた頃,約 1 年間来院がなく,#46 の進行したう蝕とともに歯肉の炎症もみられた。 歯科医師のう蝕治療と同時に再教育とプラークコントロールを行い,その後 3 カ月毎の SPT を継続し維持安定できている。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(1):87-94,2014
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