2022 年 64 巻 1 号 p. 39-49
知的能力障害を伴う重度侵襲性歯周炎患者に対して,全身麻酔下での全顎のスケーリング・ルートプレーニング(SRP)と患者・介助者に対するホームケアの支援を行い,良好な経過を得た症例について報告する。
患者は25歳女性で,歯肉が腫れているという主訴で来院した。口腔内は全顎的にプラークの付着と歯肉の炎症を伴う深い歯周ポケットを認めた。知的能力障害により患者自身でのブラッシングが不十分であったが,これまで患者に対するセルフケアの支援や介助者の介入はなかった。プロービング時に痛みを訴え歯科適応は困難であった。歯周治療は抗菌療法を併用し,全身麻酔下で一度に全顎のSRPを行った。その後,病状が安定したため1ヶ月間隔のサポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)に移行した。SPT中は,患者に対するセルフケアの支援と介助者に対するブラッシング指導を継続して行った。その結果,患者と介助者共にブラッシングの習慣化とプラークコントロールの向上を認め,歯周組織は大幅に改善した。歯周組織の改善に伴い歯科適応も向上した。現在,SPT移行後約3年が経過しているが,歯周組織は安定して維持している。本症例から,知的能力障害を伴う重度侵襲性歯周炎患者に対するホームケアの支援および非外科的歯周治療と短期間でのSPTは,歯周組織の改善と歯科適応の向上に有効であることが示唆された。