超高齢社会において健康寿命延伸の阻害要因である認知症の予防は喫緊の課題である。近年,認知症の新たな修正可能リスク因子として「口腔の健康」が注目される。本稿では,認知機能と口腔の健康の関連を「歯周病」と「口腔機能」の二側面から最新知見を概説し,臨床応用と今後の展望を考察した。歯周病と認知症の関連は,多数の疫学研究に加え,歯周病原細菌の脳内侵入や全身性炎症を介した経路など,生物学的メカニズムの解明が進んでいる。一方,口腔機能では,従来の咀嚼機能に加え,認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)と関連するオーラルディアドコキネシス(ODK)など,より巧緻な機能の重要性が示唆される。我々の研究で,特にODK/ka/の低下がMCIの独立したリスク因子であることを見出した。これらの知見は歯科専門職に新たな役割を提示する。日常臨床での口腔状態の変化は「認知機能低下の早期サインを捉える窓」となりうる。また,患者の認知特性に配したセルフケア指導法の開発や,オーラルフレイルへの予防的介入のエビデンス創出も今後の重要な課題となっている。口腔管理を,認知症予防だけでなく,全身の健康とquality of life(QOL)を維持向上させる包括的アプローチの一環と捉えることが,超高齢社会における歯科専門職の責務である。