日本歯周病学会会誌
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In vitroにおける歯根面への線維芽細胞様細胞の付着様式に関する電子顕微鏡的観察
田中 裕子
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1989 年 31 巻 2 号 p. 434-461

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抄録

本研究は歯根面の脱灰処理が線維芽細胞様細胞の歯根面への付着様式, 細胞の増殖および機能発現にいかなる影響をおよぼすかをin vitroで経時的に観察したものである。矯正的理由で抜去されたヒト抜去歯のセメント質片および象牙質片を (1) 非脱灰 (2) クエン酸脱灰および (3) EDTA脱灰の三群に分けた。さらに対照群として, 培養用plastic sheet群を加えた。各群試料上にヒト歯根膜由来線維芽細胞様細胞を培養し電子顕微鏡学的観察を行いその結果, 非脱灰群に比べて脱灰群では歯質のコラーゲン線維の露出がみられ, そのコラーゲン線維を基質として, 細胞の付着性が促進し, 層状化も強く, 多量のコラーゲン線維の形成が認められた。また, これらの傾向はセメント質よりも象牙質で強く認められ, さらにクエン酸脱灰を行った象牙質上に培養した細胞でEDTA脱灰と比べて強い機能発現がみられ, 歯周治療時に歯根面の結合組織性付着を促進するためには, 付着面がクエン酸脱灰象牙質であることが最も望ましいことが示唆された。

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