日本歯周病学会会誌
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温度ストレスがPorphyromonas gingivalisの付着能および抗原性に及ぼす影響
天野 敦雄久保庭 雅恵堀江 博片岡 宏介永田 英樹雫石 聰
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1997 年 39 巻 1 号 p. 86-92

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抄録

歯周病原性菌の歯周組織への定着, 炎症の惹起, 組織破壊と推移する辺縁性歯周炎の進行過程において, 病原性菌の存在する環境変化のひとつとして局所の急性炎症による歯周組織の温度上昇が考えられる。Porphyromonas gingivalis ATCC 33277株を39℃で培養し2℃の温度ストレスを加えると, 37℃培養に比べ菌体表層の線毛構造物の発現が著しく抑制されるとともに, ヒト全唾液被覆ハイドロキシアパタイトビーズ (HAP) へのP. gingivalisの付着能が著しく減少した。P. gingivalis線毛と特異的に結合する唾液タンパク質である高プロリンタンパク質およびスタセリンで被覆したHAPと菌体との結合も顕著な減少を示した。さらに, 本菌のStreptococcus oralisとの共凝集能も92%の減少を示した。全菌体抽出物のウエスタンブロットと歯周炎患者血清との反応バンドにおいて37℃と39℃培養菌の間に差が認められ239℃培養菌において既存バンドの濃度の減少と新しいバンドの検出が観察され2両菌体の血清との反応性には相違が認められた。以上の結果から, P. gingivalisは歯周炎の進行に伴う周囲環境の変化に対応して, その付着能や抗原性を変化させていく可能性が示唆され, 本菌の歯周ポケット内での生態の一端が推測された。

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