2000 年 11 巻 1 号 p. 55-63
われわれは1985年から1999年の間に24症例の下大静脈浸潤腫瘍に手術を施行した.内訳は腎腫瘍が17例,副腎癌が2例,肝癌が2例,横紋筋肉腫,傍神経節腫およびWilms腫瘍がそれぞれ1例であった.腎腫瘍は10%に下大静脈に浸潤するとされるが,今回は腎癌17症例(男性:女性=14:3,47~78歳,平均年齢61.6歳)の手術について検討した.基本術式は腎腫瘍切除と下大静脈浸潤腫瘍栓摘出である.下大静脈遮断法によって種々の補助循環法が選択されるが,われわれは単純下大静脈切開法(SVCI)と25℃の低体温・循環停止法(CPBA)の2つに分け手術を行っている.腎腫瘍の下大静脈浸閏症例17例中10例(58.8%)が生存しており,最長生存は163ヵ月である.手術時間・輸血量をSVCIとCPBAで比較したが,統計的有意差を認めなかった.CPBAは腎腫瘍の腫瘍栓が下大静脈の高位(Novick分類でレベル3と4)まで浸潤している場合でも積極的に用いるべき手段と考える.