2002 年 13 巻 3 号 p. 217-222
ナットクラッカー症候群(左腎静脈捕捉症候群)は,左腎静脈が上腸間膜動脈と大動脈との間で圧迫され,左腎静脈還流障害から血尿,腰痛などを呈する疾患である.
症例1:24歳,男.15歳時から肉眼的血尿と左側腰痛を認めた.貧血はなく,腎機能は正常であった.上腸間膜動脈-大動脈間距離は4mm,左腎静脈-下大静脈圧較差は6.8cmH2Oであった.症例2:16歳,男.11歳時から肉眼的血尿を認めた.軽度貧血があったが,腎機能は正常であった.上腸間膜動脈-大動脈距離は6mm,左腎静脈-下大静脈圧較差は5.4cmH2Oであった.いずれも左腎静脈転位術を行った.症例1は症状が消失した.症例2は吻合部が閉塞したが,保存的治療により軽快した.
左腎静脈転位術は,左腎静脈が下大静脈に流入する部位を切離し,大動脈-上腸間膜動脈間距離が広い尾側に再吻合するものである.侵襲も少なく,確実な術式であるが,2例目が閉塞したのは反省すべき点であった.