抄録
要約:子宮癌などの骨盤悪性腫瘍治療後には下肢リンパ浮腫をきたすことはよく知られているが,一部は下腹部・陰部リンパ浮腫による排尿障害・リンパ漏を合併し生活の質を著しく低下させる.患者が陰部リンパ浮腫を訴えるときにはすでに重症化していることがほとんどであり治療は難渋する.重症化前に診断・治療することが望ましく,表層のリンパ流を詳細に描出できるインドシアニングリーン(ICG)リンパ管造影が有用である.下腹部・陰部リンパ浮腫の病態生理的重症度分類,genital dermal backflow(GDB)stageにより,陰部リンパ浮腫自覚前に下腹部・陰部リンパ浮腫の診断が可能となった.リンパ循環動態の観点からは,下腹部リンパ浮腫は陰部リンパ浮腫に先行する病態であり,下腹部リンパ浮腫の診断・治療により陰部リンパ浮腫を予防できる可能性がある.ICG リンパ管造影を用いることで骨盤癌治療後リンパ浮腫のより良い管理が期待される.