静脈学
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25 巻, 1 号
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巻頭言
原著
  • 廣岡 茂樹, 外田 洋孝, 小林 夕里子, 折田 博之
    2014 年 25 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:【目的】2008 年から2012 年に行った大伏在静脈瘤529 例中11 例に大伏在静脈本幹血栓性静脈炎を経験したので,その外科的治療法に関し検討する.【方法】大伏在静脈本幹血栓症の先端部位置および範囲,手術時期,手術方法,術後肺塞栓症の合併の有無について調査する.【結果】血栓先端が総大腿静脈に露出していた症例が3 例,大伏在静脈-大腿静脈接合部(SFJ)近位部までが4 例,大腿中央部までが4 例で,血栓の範囲は足関節までが8 例,膝下までが2 例,膝上までが1 例であった.手術は外来受診日より11.6±10.0 日に行われ,手術方法は血栓摘除とストリッピング手術が9 例に行われ,2例には大伏在静脈本幹の分節切除が行われた.術後肺塞栓症の合併は2 例に認められた.われわれの可及的早期に外科治療(血栓摘除および大伏在静脈本幹ストリッピング)を行う方針は術後無症候性肺塞栓の合併などの問題は認めたが,一定の効果のある方法と考えられた.
  • 井田 艶子, 山本 尚人, 加藤 牧子, 兼子 由美, 田中 宏樹, 鈴木 実, 眞野 勇記, 佐野 真規, 斉藤 貴明, 杉澤 良太, 海 ...
    2014 年 25 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:弾性ストッキング(ES)は静脈疾患・リンパ管疾患の医療器具として,複数の企業から販売されている.今回は,当科のES 管理指導中に経験した着用状況が不良であった症例について調査し,ES コンダクターの立場から,管理上の問題点と各種企業製ES の特性について考察したので報告する.2010 年11 月〜2011 年12 月までに,ES コンダクターが着用指導し,使用状況についてインタビュー形式で回答の得られた91 例について検討した.ES の着用頻度は,週2 回以下の着用症例が31.9%と高率で,着圧別では着圧が低い症例で着用頻度が低かった.また処方例の41.4%が,ES に対し不満を持っていると回答した.企業性のES は各種異なる特徴を持ち,これらを熟知したES コンダクターによる管理指導が,今後のES 治療効果の向上に期待される.
  • 白杉 望, 堀口 定昭, 白土 裕之, 川上 利光, 小野 寿子, 矢吹 志保, 城島 久美子, 新見 正則
    2014 年 25 巻 1 号 p. 13-19
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:一次性下肢静脈瘤(Vx)に無症候性深部静脈血栓症(DVT)が合併する頻度は不明である.われわれは,一次性Vx として愛誠病院下肢静脈瘤センターを初診した患者を対象に後方視的に検討した.2010 年1 月から2011 年3 月の間に一次性Vx と診断し超音波検査により深部静脈を精査した患者は431 人だった.431 人中20 人,4.64%にDVTを認めた.431 人のうち表在性血栓性静脈炎(STP)を呈していた患者は24 人.そのうち10 人にDVT を認めた.STP のないVx 患者407 人中DVT の合併は10 人だった.χ2 testによりSTP とDVT に相関を認めた.STP 合併Vx 患者のDVT(10 人12 肢)では,1)ヒラメ筋静脈血栓症を全肢,脛骨静脈血栓症を3 肢に認めた,2)STP とDVT の合併症例は全例C3 以上だった,3)10 人いずれも伏在型症例だったが伏在静脈の直径大小とDVT の有無に相関はなかった.STP を併発した下肢Vx 症例では下腿DVT を合併している可能性があり,深部静脈を超音波検査にて精査するべきである.
  • 山本 崇, 坂田 雅宏
    2014 年 25 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:【はじめに】大腿神経ブロックを用いての日帰りストリッピング手術についての調査結果を報告する.【対象】2012 年1〜12 月に大腿神経ブロックを用いて手術を行った下肢静脈瘤症例1056 例,1297 肢を対象として調査を行った.【方法】大腿神経ブロックは鼠径部にてエコー視下に行い,1%リドカインを5〜8 ml 使用した.手術中の痛み,および術中沈静の希望について5 段階のverbal rating scale を用いて,麻酔法への満足度を調査した.【結果】手術中の痛みに関しては「全く痛くなかった」と「少し痛かった」を併せると90.9%を占めた.鎮静の希望については,83.9%で起きて話していたほうがよかったとの回答を得た.大腿神経ブロックによる合併症は認めなかった.【結語】大腿神経ブロックと局所麻酔,tumescent local anesthesia(TLA)を併用することにより20 ml 以下の1%リドカインだけを用いて,安全に下肢静脈瘤の手術が可能であった.
  • 田中 宏樹, 鈴木 章男, 袴田 安紀子, 神谷 隆
    2014 年 25 巻 1 号 p. 26-33
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:一次性下肢静脈瘤(VV)肢の静脈還流量はその病態に重要な因子である.われわれはduplex scan によって静脈還流量を反映する指標を探索し,同時に下肢静脈系の血行動態を考察してきた.今回はVV 症例のストリッピング手術後1 年の深部静脈断面積をduplex scan で計測した.症例は2002〜2011 年までに大伏在型下肢静脈瘤に対してストリッピング手術を実施した手術症例90 例134 肢を対象とした.術前1 カ月,術後2 カ月と1 年に下肢深部静脈の4 カ所(総大腿静脈の中枢側と末梢側,浅大腿静脈,膝窩静脈)の静脈断面積を計測した.術後の深部静脈断面積の変動を臨床病期別に分類し比較検討した.C2, 3 群の立位における静脈断面積は,術前に有意差のみられた膝窩静脈が術後2 カ月で縮小していたが(P<0.01),12 カ月後にさらに縮小することはなかった.他の部位については,いずれの時期も有意な縮小はみられなかった.臥位では総大腿静脈末梢側が術後2 カ月に縮小していたが(P=0.04),立位同様に12 カ月後にさらに縮小することはなかった.他の部位については,いずれの時期も有意な縮小はみられなかった.またC4, 5 群では立位,臥位ともに術前と比較し有意な縮小はみられなかった.
  • 大森 啓充, 金岡 保, 村田 芳夫, 山﨑 雅美, 武居 浩子, 松本 信夫, 住元 了, 應儀 成二
    2014 年 25 巻 1 号 p. 34-42
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:重症心身障害児(者)(以下,重症児)の多くは,脳性麻痺などによる筋緊張異常などから四肢の麻痺をきたし,移動能力が制限されることにより,長期臥床を余儀なくされ,循環器系,とくに深部静脈血栓症(以下,DVT)のリスクが高くなるともいわれている.重症児の死亡原因で最も多いのは呼吸器感染であるが,突然死が4.2%にあるとも報告されている.DVT は,無症候性に経過し,肺塞栓症などによって発見されることも多く,突然死の原因ともなりうると考えられる.今回,われわれは,重症児の慢性期DVT の診断と再発対策について,とくに下肢静脈超音波検査とD–ダイマーの経時的変化を中心に検討した.その結果,下肢静脈超音波検査で,28 例のうち,12 例(42.9%)にDVT を認めた.血栓形成部位では,浅大腿静脈,総大腿静脈が多く,ヒラメ筋静脈には認められなかった.DVT 症例に対しては,局所再発,肺塞栓症などの対策として,PTINRを2 前後に保ちながらワルファリンを投与した.D–ダイマー については,5 µg/ml 以上の高度増加をきたした症例はなく,DVT 群と非DVT 群で,有意差を認めた(p<0.05).また,DVT 症例では,ワルファリン投与後でD–ダイマー値が全例1.0 µg/ml 以下に低下していた.重症児の突然死のなかにDVT による肺血栓塞栓症が含まれている可能性もあり注意が必要であるが,重症児の場合,基礎疾患などによる血管系の未発達などの要因も考えられ,重症児の医療支援を円滑に行っていくうえでもDVT の評価検討は非常に重要な課題であり,DVT の診断と再発対策には,とくに非侵襲的検査として下肢静脈超音波検査とともに,D–ダイマーの経時的変化が非常に有用であると考えられた.
総説
  • 山本 匠, 成島 三長, 光嶋 勲
    2014 年 25 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:子宮癌などの骨盤悪性腫瘍治療後には下肢リンパ浮腫をきたすことはよく知られているが,一部は下腹部・陰部リンパ浮腫による排尿障害・リンパ漏を合併し生活の質を著しく低下させる.患者が陰部リンパ浮腫を訴えるときにはすでに重症化していることがほとんどであり治療は難渋する.重症化前に診断・治療することが望ましく,表層のリンパ流を詳細に描出できるインドシアニングリーン(ICG)リンパ管造影が有用である.下腹部・陰部リンパ浮腫の病態生理的重症度分類,genital dermal backflow(GDB)stageにより,陰部リンパ浮腫自覚前に下腹部・陰部リンパ浮腫の診断が可能となった.リンパ循環動態の観点からは,下腹部リンパ浮腫は陰部リンパ浮腫に先行する病態であり,下腹部リンパ浮腫の診断・治療により陰部リンパ浮腫を予防できる可能性がある.ICG リンパ管造影を用いることで骨盤癌治療後リンパ浮腫のより良い管理が期待される.
症例報告
  • 中村 浩彰, 角谷 誠, 寺尾 侑也, 伴 親徳, 開發 謙次, 七星 雅一, 清水 宏紀, 大西 祥男
    2014 年 25 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:症例は83 歳,女性.10 年前に肺塞栓症,深部静脈血栓症に対して,永久型下大静脈フィルター(Greenfield)を留置された.以後,ワルファリン内服を継続していたが,3 カ月前より自己中断した.1 週間前,農作業後に腰痛が出現.その後,意識障害となり,救急搬送された.来院時,プレショック状態,貧血であった.CT で右後腹膜血腫あり.下大静脈フィルターより末梢に血栓が確認された.大量輸液,輸血を行うも,出血性ショックとなり,永眠された.病理解剖では,下大静脈フィルターに血栓が充満.右腸骨静脈破裂部から後腹膜・腹腔内に出血していた.大量血栓が生じ,腸骨静脈の脆弱性も相まって破裂したと考えられた.後腹膜血腫を発症した報告は散見されるが,いずれも軽症である.出血性ショックから死亡に至った稀な症例を経験したため,文献的考察を含めて報告する.
  • 河内 秀臣, 前田 英明, 梅澤 久輝, 服部 努, 中村 哲哉, 梅田 有史, 飯田 絢子, 石井 雄介, 塩野 元美, 辻村 隆介, 根 ...
    2014 年 25 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:症例は79 歳の男性で,2012 年3 月頃より,両下肢の浮腫を自覚.徐々に浮腫が増悪するようになり,前医受診.腹部CT にて下大静脈を圧排する後腹膜囊胞性腫瘤を指摘され,当科紹介受診.10 月に手術目的に入院した.腹部CT では,腹部大動脈と下大静脈の間に挟まれるように腎下部下大静脈を左方より圧排する長径56 mm の囊胞性腫瘤を認めた.2012 年10 月,経腹的に囊腫摘出術を施行した.摘出標本の重量は100 g,最大径6.4 cmで,囊腫壁は薄く,内容液は淡黄色,漿液性であった.病理組織学的検査所見では囊胞壁,内容液に悪性所見はなかった.抗平滑筋抗体陽性,CD31 染色検査にて内皮細胞を認め,D2-40 でリンパ系を否定し,静脈由来の真性血液囊腫と診断した.術後17 病日に軽快退院し,再発は認めない.静脈由来の後腹膜囊腫はまれであり,報告する.
  • 阪越 信雄, 樋口 卓也, 井手 亨
    2014 年 25 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:左鼠径部腫瘤を主訴とする腸骨静脈圧迫症候群(iliac vein compression syndrome; IVCS)を経験した.症例は46 歳の男性.以前から左下肢静脈瘤と左下肢がやや太いことを自覚していたがとくに症状がなかったので放置していた.最近になって家人に左鼠径部腫瘤を指摘され受診した.体表エコーで左鼠径部腫瘤は鶏卵大の静脈瘤であることが判明した.造影CT で左総腸骨静脈が右総腸骨動脈と椎体との間で圧迫されておりIVCS と診断した.また左鼠径部静脈瘤から連続する左右下腹壁の静脈瘤を認めた.左下肢静脈造影では,左足首から注入した造影剤は左腸骨静脈に流入せず,左鼠径部静脈瘤→左下腹壁静脈瘤→右下腹壁静脈瘤→右腸骨静脈に流入した.IVCS は高度下肢腫脹や深部静脈血栓症を主訴に受診して診断されることが多い.本例は無症状で,左鼠径部腫瘤を契機に受診し確定診断がついた稀な症例であった.
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