2021 年 32 巻 3 号 p. 313-317
症例は71歳女性.右変形性膝関節症にて当院整形外科に通院中.2021年2月初旬,右腓腹部の発赤,腫脹,熱感が出現し深部静脈血栓症(DVT)を疑われ,当科受診.血管エコー検査では,右膝窩静脈や右大腿静脈に血栓は認めず,右膝窩静脈と併走する比較的太い静脈内に可動性血栓が充満していた.この静脈は筋膜下を走行し,膝関節裏で膝窩静脈に合流していた.DVTと診断,抗凝固療法を開始した.この時期は新型コロナウイルス感染症拡大による医療逼迫が問題で,当院周辺の基幹病院でも肺血栓塞栓症(PTE)など緊急症例の受け入れが困難であった.抗凝固療法中にもPTEを発症するリスクがあること,PTEに対する緊急治療を受けにくい医療情勢であること,血栓が存在する静脈は体表に近くアプローチしやすいことなどを説明し,血栓除去術の方針とした.手術は局所麻酔下に腹臥位で施行,術後の造影CTで腓腹筋静脈血栓症であったと診断した.