日本写真学会誌
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原子核乾板を用いたDark Matter探索実験
中 竜大中村 光廣佐藤 修中野 敏行丹羽 公雄
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2008 年 71 巻 5 号 p. 341-348

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抄録

近年の宇宙における詳細な観測データから, 宇宙の物質の約80%は, まったく未知の物質で満たされていることが確実になってきた.またそれは, 我々の銀河にも存在することがわかっている.この未知の物質をDark Matterと呼んでいる.Dark Materは, 相互作用が弱く, 重い電気的に中性の粒子WIMP (Weakly Interacting Massive Particle) として存在していると予想され, 現在世界中でその探索が行われている.しかし, ほとんどの検出器は, WIMPによって跳ね飛ばされる原子核のエネルギースペクトルの測定から, 地球の公転によるシグナルの季節変動を用いて発見を試みているが, 変動の小ささと, 長期間の測定の必要性から信頼性が低い.
我々は高分解能の原子核乾板を用いて, 地球におけるWIMPの方向異方性を用いた指向性検出によってWIMP探索を行うべく開発を行っている.方向は, 地球の自転によって日変動するので, 信頼性が高い.我々は, これまでの原子核乾板より5倍分解能を向上させた原子核乾板NITを開発し, NITが反跳原子核の飛跡 (数100nm) を捕える能力があることを, 低速クリプトンイオンを用いてテストし, 電子顕微鏡を使って確認した.また, この飛跡を光学顕微鏡ベースの自動読み取り装置で読み出すために, 光学顕微鏡で数100nmの飛跡を認識させる手法の開発を行った.また, NIT自身の感度調整によって, 電子バックグラウンドを5桁以上除去することができることを確認した.今後, NITによるWIMP探索実験開始にむけ, 研究開発を精力的に行っていく.

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