日本写真学会誌
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71 巻, 5 号
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  • 谷 忠昭
    2008 年 71 巻 5 号 p. 308-317
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    写真感度は乳剤の光吸収率と潜像形成効率に依存し, それらにとって本質的に重要な因子はハロゲン化銀粒子のサイズである. 本報は粒子サイズ依存性の観点から写真乳剤の性能を概観する中で, OPERAおよび暗黒物質検出用原子核乳剤の位置づけをする. 写真乳剤を3つに分類した. クラスIの粒子 (>0.5μm) は高い吸光度のために高感度であり, カラーフィルムなどに用いられる. クラスIIの粒子 (0.2μm~0.5μm) は基本的に欠陥フリーで高効率の潜像形成を可能にする環境を提供し, OPERA用粒子はこのクラスに属する. クラスIIIの粒子 (>0.1μm) は暗黒物質の検出用に期待されているが, 未だ十分には調べられていない. それらの形成, 物性および感光性は量子サイズ効果の発現, 個々の粒子中の増感中心, 不純物イオンあるいはかぶり中心などの数がきわめて少ない点で興味深い.
  • 田中 宏幸
    2008 年 71 巻 5 号 p. 318-323
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    原子核写真乾板の技術を用いて火山体内部の透過像を撮影する全く新しいミュオンラジオグラフィ測定技術を開発した. その技術を用いて山体から比較的近い位置にミュオン測定器を設置, 数ヶ月間の観測で浅間山, 昭和新山の火道を高い空間分解能でイメージングすることに成功した. 火山体という厳しい環境下における観測を行うに当たり, 軽量, 安価, そして電力消費を要しない写真フィルムが担う役割は極めて大きい.
  • 平 義隆, 濱田 要, 森島 邦博, 中野 敏行, 加藤 政博, 山崎 潤一郎
    2008 年 71 巻 5 号 p. 324-326
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    現在, 加速器 (日本に約200基) の利用は, 素粒子実験, 放射光利用, アイソトープ製造, 重粒子線がん治療用など多岐にわたる. これら加速器施設では, 安全確保, 加速器自身の性能診断などのために放射線計測が日常的に行われている. 使用されている計測器は, 強度を測定するだけであり, 運転中の加速器の周りで飛散している放射線の角度分布, 運動量 (エネルギー) 分布などに関する情報は得られない. 放射線の到来方向やエネルギーを精密に計測することで加速器のどこで放射線が発生しているのかを正確に突き止めることは, 加速器で起きているビーム損失の原因究明, あるいは, 効率的な遮蔽を可能にするために, 極めて有益な情報となる. 原子核乾板を用いれば, 加速器周辺で飛散している1本1本の放射線の粒子識別, 角度分布, 運動量分布, fluxを測定することができる. 検出器を狭い場所にも設置できるため, 機器が多数置かれている加速器周辺の放射線モニターに適している.
    また, 放射線を用いた非破壊検査や医療診断に応用できるようになれば, その優れた位置検出性能を活かすことで通常型の放射線検出器を利用したのでは不可能な精密な計測が行えるようになるはずである.
  • 高嶋 圭史, 加藤 政博, 保坂 将人, 山本 尚人, 森本 浩行, 渡邉 信久, 竹田 美和
    2008 年 71 巻 5 号 p. 327-331
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    名古屋大学では「モノつくり」を念頭に置いた計測・分析拠点である中部シンクロトロン光利用施設 (仮称) 計画を愛知県, 産業界, 大学, 研究機関と連携して推進している. シンクロトロン光源の紹介と, 本施設での原子核乾板を用いた実験の可能性について報告する.
  • 河原林 順, 森嶋 邦博, 中 竜大, 渡辺 賢一, 井口 哲夫
    2008 年 71 巻 5 号 p. 332-334
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    自動飛跡読取装置により格段に性能が向上した原子核乾板の, 原子力工学分野への適用について検討した. その結果, 二つの新規応用計測システムを提案することができた. 今後は, 理学の分野だけでなく, 工学の分野でも原子核乾板への再注目がなされ, 研究開発が盛んに行われると期待される.
  • Marcos DRACOS
    2008 年 71 巻 5 号 p. 335-337
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    Neutrino nature and absolute mass scale are major questions in particle physics which cannot be addressed by the present neutrino oscillation program. To answer these two questions, several neutrinoless double beta decay experiments are underway or planed for the near future. These experiments, mainly use bolometric techniques or gaseous counters coupled with scintillator detectors. The energy resolution is better in bolometric experiments but experiments coupling tracking with calorimetry have the advantage of observing the two electron tracks and remove many background sources. Here, we present a proposal of using nuclear emulsions to observe double beta decays. This technique has the advantage of precise tracking and vertexing even for low energy electrons.
  • 安田 仲宏, Mark AKSELROD, Jeff SYKORA, Eric BENTON, Nakahlro YASUDA
    2008 年 71 巻 5 号 p. 338-340
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    新しいルミネセンス単結晶 (Al2O3: C, Mg) 素子を飛跡検出器素子として利用できる可能性を示した.粒子線照射後の素子を化学処理することなく, 共焦点顕微鏡の光学系により読み出すことで, 原子核乳剤のそれとよく似た画像を得ることができる.この素子は熱的に非常に安定で (600。C程度まで) フェーディングがなく, 繰り返し読み出しが可能である.さらに高い温度でアニールすることにより, 再利用が可能である.などの線量計素子として理想的な特徴を有している.これを用いた粒子線検出では, 1-1, 000keV/μmのエネルギー損失を有する粒子に対して応答が線形であることを確認した.
  • 中 竜大, 中村 光廣, 佐藤 修, 中野 敏行, 丹羽 公雄
    2008 年 71 巻 5 号 p. 341-348
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    近年の宇宙における詳細な観測データから, 宇宙の物質の約80%は, まったく未知の物質で満たされていることが確実になってきた.またそれは, 我々の銀河にも存在することがわかっている.この未知の物質をDark Matterと呼んでいる.Dark Materは, 相互作用が弱く, 重い電気的に中性の粒子WIMP (Weakly Interacting Massive Particle) として存在していると予想され, 現在世界中でその探索が行われている.しかし, ほとんどの検出器は, WIMPによって跳ね飛ばされる原子核のエネルギースペクトルの測定から, 地球の公転によるシグナルの季節変動を用いて発見を試みているが, 変動の小ささと, 長期間の測定の必要性から信頼性が低い.
    我々は高分解能の原子核乾板を用いて, 地球におけるWIMPの方向異方性を用いた指向性検出によってWIMP探索を行うべく開発を行っている.方向は, 地球の自転によって日変動するので, 信頼性が高い.我々は, これまでの原子核乾板より5倍分解能を向上させた原子核乾板NITを開発し, NITが反跳原子核の飛跡 (数100nm) を捕える能力があることを, 低速クリプトンイオンを用いてテストし, 電子顕微鏡を使って確認した.また, この飛跡を光学顕微鏡ベースの自動読み取り装置で読み出すために, 光学顕微鏡で数100nmの飛跡を認識させる手法の開発を行った.また, NIT自身の感度調整によって, 電子バックグラウンドを5桁以上除去することができることを確認した.今後, NITによるWIMP探索実験開始にむけ, 研究開発を精力的に行っていく.
  • 第2部発色現像 (その3) 1940, 1950年代におけるKodak社による強力な技術構築
    大石 恭史
    2008 年 71 巻 5 号 p. 349-367
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    40, 50年代にKodak社はカップラー内蔵型感材の色再現の改良に強力に取り組んだ. 新しい現像薬とカップラー等が, 基礎研究の基盤の上に開発された. 特に大きな効果を挙げたものとしては, 3-acylamino-5-pyrazoloneマゼンタ, pivaloylacetanilideイエローのカップラーがA. Weissbeger, PVittumらによって, カラード・カップラー型マスキングがWHanson, Jrらによって夫々見出され実用に供された. 生産面ではTRussellらによって発明された同時多層塗布法が感材の品質と生産性を飛躍的に向上させたばかりでなく, 感材設計に発展性をもたらした. 1960年頃Kodakの感材技術は第1次の完成期に達し, 業界他社に向かうべき方向を示していた.
  • 松本 尚也, 阿部 時也, 羽石 秀昭
    2008 年 71 巻 5 号 p. 368-374
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    圧縮符号化を伴うカラー動画像伝送システムにおいて, 高い色再現性を維持した伝送を実現しようとする場合, 主観的に劣化を知覚させない程度の適切な圧縮率 (ビットレート) の設定が必要となる. そこでは, 色再現性を含めた画質に関して, 主観的な評価との相関性が高い客観的評価尺度が求められる. 本論文では, 近年利用が広がりつつあるH. 264/AVCを対象として, この要求に答える評価方法について検討した. 本研究では, 色再現性の観点から, 国際照明委員会CIEが規定するCIELAB色差および, その改良版であるS-CIELAB色差を取り上げる. まず, 圧縮画像の各フレームにS-CIELABを適用したところ, CIELABよりも相関性が向上する結果が得られたものの, 十分とはいえないものであった. そこで次に, H. 264/AVCによる劣化が主に濃淡分布の平坦な領域で知覚されるという被験者のコメントに基づき, 色差算出領域をフレーム内の平坦部分に制限する工夫を行うことにより, さらに主観評価との相関性が向上する結果を得ることができた.
  • 青木 直和, 大谷 大輔, 新井 浩史, 増田 裕貴, 小林 裕幸
    2008 年 71 巻 5 号 p. 375-379
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    ルノワールの若い女性の肖像画はとても人気がある.とくに彼の肌色の表現は好まれている. 本研究は肌色がルノワール風に表現されたポートレイト写真を作ることを目的としている. ルノワールの肌色の表現技術を解析し, 頬, 唇, その他の顔肌部のそれぞれの平均と分散を求め, ポートレイト写真のそれぞれ匹敵する場所に適用した. 頬の範囲は, 写真や絵画の顔の空間情報が無く, 色相角に閾値を設けることで分離できた. 絵画の表現をそのまま写真に適用した場合の問題点とその解決法を検討し, 写真に適した表現法を提案した.
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