抄録
北海道の十勝沿岸には五つの潟湖が存在し,平時は砂州によって外海と隔てられた閉塞湖である。これらは,流入河川の高水時での湖水位上昇から砂州の低部が越流により破壊され,湖水の2/3以上が外海に流出するという間欠開口型の潟湖である。本研究では,潟湖群の形成過程をさぐるため,生花苗沼と湧洞沼の砂州上4点でそれぞれ約10 m長の堆積コアを採取してC14年代を求め,さらにコア中の礫の起源をさぐるため,礫の薄片を作成し岩石種を特定した。また,このとき,先行研究で指摘された砂州の水文的機能を確かめるため,透水試験と粒度分析によってコアの透水係数分布を求めた。解析の結果,次のことが明らかになった。1) コア中の礫は,ほとんどが日高変成帯の岩石であり,一旦河川により外海に流出したものが津波・高潮によって堆積した。2) 生花苗沼は約6,000年前に誕生し,5,200~4,800年前の高い海水準時に礫層を形成し現在の砂州に近い状態にまで発達した。3) 掘削コアの透水係数分布から,閉塞時に起こる湖水の外海への被圧地下水流出は砂州中の巨礫層を経路とすることが考えられる。