抄録
別府湾(大分県)の沿岸海底に湧出している可能性のある温泉を検出するために,沿岸の海底地下水湧出(SGD)の探査に近年多用されている小型船舶を用いたラドン曳航調査法を利用し,日本最大規模の温泉地である別府温泉に接する南北約10kmの沿岸浅海域において表層海水中のラドン222Rn濃度,塩分,水温を観測した。当該沿岸の陸域において観測された自噴温泉水,地下水ならびに河川水のデータを入力した「Rn濃度と塩分のミキシング・ダイアグラム」を用いたデータ解析をしたことにより,河川水が混合した海水を峻別し,さらに海底地下水湧出(SGD)に海水が混入する程度により3段階に区分したところ,地下の水の混入割合の高い海域を4か所認めた。その4か所については,推定される陸域の温泉流動経路や地下構造との関連性,222Rn濃度と水温との関係を調べた結果,2か所が海底温泉の湧出地域である可能性が示された。