順天堂医学
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原著
粘膜下異所腺が噴門部早期胃癌の進展に及ぼす影響に関する臨床病理学的研究
劉 星漢
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1993 年 39 巻 3 号 p. 329-337

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抄録

胃上部の早期癌73例 (噴門部早期癌26例と噴門部を除く胃上部早期癌47例) を対象として, 粘膜下異所腺の病態と癌巣の生物学的因子, ならびに粘膜下層浸潤形式との関係について検討した結果, 噴門部早期癌は噴門部を除く胃上部早期癌に比して, 特徴的性格をもつことがわかった. すなわち, 噴門部早期癌は20mm以下の比較的小さな癌巣径の分化型腺癌が多く, 粘膜下層癌の比率は80.8%と高く, その粘膜下層浸潤の形式は間隙型が52.4%を占めた. 癌巣下, あるいはその周囲には粘膜下異所腺が73.1%と高率にみられ, とくに癌巣下にみられた異所腺が多かった. これら異所腺の胃上部における分布は主として噴門部に密集していた. 癌巣周囲には腸上皮化生を伴うことが多く, 腸上皮化生の程度が高度であった症例の91.7%に異所腺が認められた. さらに, 粘膜下層浸潤形式が間隙型を示した11例はすべてに異所腺を併存していた. 以上より, 噴門部は異所腺が好発しやすい環境にあることがわかった. このことは噴門部の粘膜筋板には多くの間隙が存在することを示唆している. 噴門部に発生することが多い分化型腺癌は, 比較的早期にこの間隙を通って粘膜下層に浸潤することと考えられる.

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© 1993 順天堂医学会
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