1999 年 44 巻 4 号 p. 394-400
耳鼻咽喉科領域の結核患者数は, 抗結核剤の普及前に比し, 予防医学の充実の成果で着実に患者数は減少してきた. しかし, 近年の社会情勢やHIV感染症のために, その減少傾向はやや鈍化しており, 依然として外来診療で結核に遭遇する機会は絶えていない. さらに, 結核の診断に際してはその頻度の減少から, 迅速な診断ができずに特に悪性疾患との鑑別に苦慮することが多いと思われる. 今回われわれは, 過去10年間の当施設における耳鼻咽喉科領域の結核症例と文献上調べることのできた症例について検討した. 耳鼻咽喉科領域では喉頭結核と頚部リンパ節結核の症例に関し, 喉頭結核と頚部リンパ節結核1例ずつを症例を挙げて検討を加えた. 結論としては, 耳鼻咽喉科領域においても結核症例は減少したが, その存在を念頭に置いて診療を行う必要があることを再確認した.