順天堂医学
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原著
インフルエンザワクチン被接種者における抗原変異株に対する抗体応答
組橋 英明
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1999 年 44 巻 4 号 p. 401-409

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抄録

目的: インフルエンザワクチンの有効性は, ワクチン株と流行株の抗原性の一致性に影響されると考えられている. 本研究では抗原変異に対して, どの程度インフルエンザワクチンの予防効果が期待できるかを推測するため, ワクチン被接種者における抗原変異株に対する抗体応答を検討した. 対象および方法: 1987年・1988年・1992年・1993年および1996年の各年度に, ワクチン接種を受けた成人から採血を行い, 得られた血清のワクチン株および次年度ワクチン株に対するHI抗体応答を比較検討した. 結果: インフルエンザワクチンの接種によりA/H1N1型・A/H3N2型およびB型の全ての株につき, 次年度ワクチン株に対しても有意にHI抗体価が上昇することが認められた. 感染防御水準とされている64HI抗体価以上の割合 (抗体保有率) は, ワクチン株に対して90.0%-100%であったが, 次年度ワクチン株に対しては27.3%-79.1%であった. また, 前年にワクチンを接種した群のワクチン株に対するHI抗体価は接種しなかった群より低かった. 結論: 現行インフルエンザワクチンはワクチン株に対して極めて良好な抗体応答を惹起する反面, 同型の次年度ワクチン株に対するHI抗体価の上昇は年度により大きく異なることがわかった. また, 前年度にワクチン接種を受けた場合に, ワクチン接種によるHI抗体価の上昇がやや低いという問題点のあることも認められた.

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© 1999 順天堂医学会
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