PLANT MORPHOLOGY
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特集II 細胞小器官のはたらきを脂質の視点で捉える
高等植物におけるガラクト脂質の合成と生体膜構築
小林 康一太田 啓之
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2009 年 21 巻 1 号 p. 29-39

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抄録

多くの生物ではリン脂質を生体膜の主要構成脂質として用いているのに対し,高等植物の葉緑体やシアノバクテリアでは,ガラクトースを含む2種類の糖脂質がその膜脂質の大部分を占めている.これらのガラクト脂質はその光合成膜における豊富さから,光合成における役割が古くから示唆されてきた.近年,ガラクト脂質合成酵素が植物で相次いで同定されたことから,ガラクト脂質合成やその制御機構に関する研究が急速に発展してきた.また,遺伝学,逆遺伝学的手法によりガラクト脂質代謝に関わる変異体が次々と解析され,ガラクト脂質の光合成やストレス時における機能が明らかになってきた.光合成組織においては,ガラクト脂質はチラコイド膜形成に必須の構成要素であり,また,光合成反応におけるこれらの脂質の直接的な役割も明らかにされてきた.さらに,これらの糖脂質はプラスチド内における機能だけでなく,リン欠乏時にはプラスチド外のリン脂質の代替をすることで,膜脂質におけるリンの使用を軽減する役割を持つことも分かってきた.ここでは,植物でのガラクト脂質合成に関する近年の研究の変遷と,最近得られた新しい知見を紹介し,これらの糖脂質の植物生体膜構築における重要な役割について議論する.

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© 2009 日本植物形態学会
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