PLANT MORPHOLOGY
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特集II 細胞小器官のはたらきを脂質の視点で捉える
リン脂質カルジオリピンの細胞内機能
片山 健太和田 元
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2009 年 21 巻 1 号 p. 17-28

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抄録

細胞を構成する生体膜は脂質により膜構造を形成するが,膜脂質には多様な分子種が存在し,膜ごとに,そして時空間的に異なった組成をしている.このような膜脂質の多様性はオルガネラ,細胞,組織といったような生物の階層構造の構築にどのような役割を果たすのだろうか.「心臓の脂質 (cardio-lipin)」として発見された特徴的な二量体構造をもつリン脂質であるカルジオリピン(CL)は,多くの真正細菌,そして動植物のミトコンドリアなどに特異的に存在する.CLの機能を解析するため,注目するタンパク質の活性とCLとの関係を解析する生化学的研究,CLの生合成過程を解析する代謝学的研究,CL生合成酵素変異体の表現型を解析する逆遺伝学的研究が行われてきた.その結果,CLの減少は呼吸鎖やアポトーシス,浸透圧調節やミトコンドリア形態などに影響を与えることが明らかになったが,CLが果たす中心的な機能が解明されたとはいえない.多細胞性を生かし,より有利にCLの中心的機能に迫るため,筆者らは真核多細胞生物で初めてCL合成酵素遺伝子CLSを同定し,T-DNAが挿入されたシロイヌナズナの変異体clsの表現型やCLSの組織特異的発現などの解析から,CLの機能,そして植物におけるミトコンドリアの多様性に迫ろうとしている.この総説では,最近の研究から明らかになってきたCLの機能について紹介したい.

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© 2009 日本植物形態学会
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