PLANT MORPHOLOGY
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特集Ⅰ 加圧凍結法が切り拓く世界
加圧凍結法をはじめ急速凍結法で可能になった細胞微細構造の解析
野口 哲子
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2013 年 25 巻 1 号 p. 21-27

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抄録

加圧凍結や液体プロパンによる急速凍結法で作製した高等植物2種,藻類14種,菌類2種,動物2種の電子顕微鏡試料の像質を比較した.その一種Euglena gracilisでは,化学固定像などから葉緑体包膜は三枚であると考えられてきたが,加圧凍結像の観察結果から再検討を要することが判った.加圧凍結像では,小胞輸送系オルガネラなどの単位膜は鮮明な脂質二重層として観察できたが,葉緑体とミトコンドリアの各包膜の脂質二重層は不鮮明であり,同じ細胞内の単位膜でも固定像で差異を生じる可能性が示唆された.また,多量の脂質を細胞外に蓄積する緑藻Botryococcus brauniiはバイオ燃料の開発で注目されているが,その特性故に化学固定法では鮮明な電子顕微鏡像を得られていなかった.一方,加圧凍結法では,調べた高等植物・藻類・菌類18種のなかで最も良好な像をほぼ100%の確率で得られ,脂質の生産・分泌に関する細胞学的研究を格段に進められた.最後に,化学固定法と比較し,急速凍結法で特に鮮明な像を得られた被覆小胞・ピッドなどの細胞内微細構造について解説した.

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© 2013 日本植物形態学会
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