2018 年 30 巻 1 号 p. 73-81
葉緑体には約100コピーの独自のゲノム(葉緑体DNA)が存在し,多彩なタンパク質と相互作用することで葉緑体核様体構造を形成する.遺伝情報を司るゲノムDNAを次世代へと確実に分配するには,相同組換え中間体であるHolliday ジャンクションを適切に解消する必要がある.これまで葉緑体ではHollidayジャンクションの解消機構は知られておらず,如何にして葉緑体DNAの分配が保証されているか理解されていなかった.我々は,葉緑体核様体の形態や分配に異常を示す緑藻クラミドモナスの変異体を解析することで,葉緑体局在のHollidayジャンクション解離酵素Monokaryotic chloroplast 1(MOC1)を発見した.MOC1は藻類から陸上植物まで広く保存されており,葉緑体DNAの分配や維持に極めて重要であることが明らかとなった,本総説では,Hollidayジャンクション研究の歴史を辿りながら,葉緑体においてHollidayジャンクション切断機構が果たす役割について紹介する.