PLANT MORPHOLOGY
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特集 光によって拓く植物細胞内の真の構造機能
高速超解像顕微鏡法の開発
宮代 大輔
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2022 年 34 巻 1 号 p. 25-27

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抄録

ライブセルイメージングは細胞内で起こる様々な現象を分子レベルで観察するための有力な方法であるが,光学顕微鏡の空間分解能の点で制約があるためナノスケールの微細構造を観察するには大きな困難が伴う.これを克服するために,これまでいくつかの超解像光学顕微鏡法が開発されてきたが,それらを用いても高速な現象を顕微鏡像として時間軸を含めた3 次元空間の中で捉えるまでには至っていない.本研究では高速と超解像を両立した多色同時観察の顕微鏡システムを開発した.SCLIM2 と名付けたこの顕微鏡システムは主に倒立顕微鏡,圧電素子駆動の対物レンズ,スピニングディスク型共焦点スキャナー,波長分光器,冷却I.I.,高速CMOS カメラ,などから構成される.これを用いて1 光子精度の蛍光顕微鏡像を撮影し,それを基に新規に開発した像復元計算を行うことで実際の生細胞観察の中で高速超解像観察を実現することに成功した.この新規の計算アルゴリズムは4 次元(3 次元空間と時間)で行われ,誤差評価に基づく確率計算と顕微鏡固有の点像分布関数を使った光学系のボケの逆演算を根拠としている.結果として分解能検証実験では71 nm を分解できたことが確認され,また生細胞中での4 次元の動的現象を100 nm以下の空間分解能で観察することに成功した.

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© 2022 日本植物形態学会
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