PLANT MORPHOLOGY
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特集 光によって拓く植物細胞内の真の構造機能
ゲノム編集と4 種オルガネラの蛍光可視化を同時に実現:オルガネラバイオロジーを拓く新手法“シゾン・カッター”の確立
田中 尚人吉田 大和
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2022 年 34 巻 1 号 p. 37-45

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抄録

原核生物と真核生物を分ける重要な細胞構造の違いとして,生体膜に囲まれた複数種類のオルガネラの有無が挙げられる.こうしたオルガネラの存在によって,真核生物は単一の細胞内区画しか持たないバクテリアと比べて極めて高度な細胞機能を実現し,ヒトや植物を含むさまざまな高次構造を備えた種が出現するに至った.多数の種類のオルガネラを正しく機能させるためには,数多くの遺伝子とその産物が適切に働く必要があるが,その分子的な仕組みの多くは未だ完全に明らかになったとは言い難い.特に可視光でも見ることが出来る葉緑体を除き,多くのオルガネラはそのままでは明瞭に観察することが出来ないため,例え特定の遺伝子機能を阻害したとしても組織染色を行わない限りオルガネラ動態に異常が生じていることを把握することすら難しい.我々はオルガネラの分裂増殖を制御する仕組みを理解するため,1つの細胞に細胞核・ミトコンドリア・葉緑体・ペルオキシソームなどのオルガネラを各1つずつのみ保持する極めて単純な真核生物であるシゾンを用いて,迅速に遺伝子機能解析を行うことを可能にする新たな分子生物学プラットフォームの構築を目指した.確立したCRISPR ゲノム編集を基盤とした新ツール“シゾン・カッター”を用いることによって,ゲノム配列を自由に改変しつつ,細胞核,ミトコンドリア,葉緑体,ペルオキシソームといったオルガネラの4 色蛍光可視化を同時に実現することが可能となり,オルガネラを制御する真の分子機構の解明へ向けた道筋が拓かれた.

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© 2022 日本植物形態学会
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