PLANT MORPHOLOGY
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特集
種内多型から考える動植物の対称性多様化機構
Safiye E Sarper 北沢 美帆
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2024 年 36 巻 1 号 p. 45-52

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抄録

多細胞生物の対称性は,その生物が持つ器官の種類・数・配置などに基づき,単一の対象軸を持つ左右相称性と複数の対象軸を持つ放射相称性の二つに大別される.動物・植物それぞれの系統で,左右相称性と放射相称性の切り替わりをはじめとする対称性の変化が起きたことが知られている.現在みられる対称性の多様性は,どのように生まれたのだろうか.本稿では,この問いに対し,動物については刺胞動物,植物については被子植物の花を例として,種内多型から議論する.刺胞動物と花には,左右相称性と放射相称性の両方がみられ, 放射相称性についても三放射・四放射など複数のタイプがみられるという共通点がある.放射相称性から左右相称性への切り替わりには,新しい軸を確立する要素が必要である.被子植物において,放射相称花から左右相称花への進化は多数の系統で独立に起きたことが知られており,その多くで CYCLOIDEA (CYC) 相同遺伝子の関与が指摘されている.例えばキンギョソウの CYC 遺伝子は , 発生初期に向背軸に関して非対称に発現することで,左右相称性を決定づけると考えられている.刺胞動物においても,イソギンチャクの種内多型の解析から,管溝 siphonoglyph が同様の位置情報源として働くと考えられる.放射相称性の複数のタイプについては,ヒドロ虫類の種内多型から,体のサイズと対象軸の数の間に正の相関が見出された.しかし,刺胞動物全体・被子植物全体といった広い系統に目を向けると,刺胞動物では四放射相称が多く,被子植物では三・五放射相称が多いといった,大きなトレンドがある.放射相称性の対象軸の数は ,単にサイズ依存で決まるのではなく,特定の数のロバストネスを確立するような機構の存在が示唆される .この機構の解明が,多細胞生物の対称性の進化の理解につながるだろう.

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© 日本植物形態学会
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