2026 年 38 巻 1 号 p. 47-52
被子植物の種子形成において、受精と栄養供給を結びつける機構は長らく不明であった。本研究では、受精後の胚珠カラザ領域に新たな構造体「篩管末端の最終形態構造」を発見した。アニリンブルー染色により、受精に失敗した胚珠ではカロースが環状に蓄積し、栄養流入を遮断することを見出した。ライブイメージングによって、中央細胞の受精がカロース分解を誘導し、篩管からの栄養流入を開放する「門」の役割を担うことを明らかにした。さらに、受精依存的に発現するβ-1,3-グルカナーゼ遺伝子AtBG_ppapを同定し、変異体でカロース分解と栄養流入が阻害されることを示した。一方、AtBG_ppapの過剰発現により種子サイズは約16%肥大し、イネでも保存された機構が確認された。これらの成果は、カスパリー線以来160年ぶりの新植物組織の発見であり、受精シグナルによる栄養制御という新原理を提示した。本総説では、篩管末端の最終形態構造の発見の経緯と、その発見がもたらす波及効果について概説する。