PLANT MORPHOLOGY
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酵母の超微構造学を求めて
大隅 正子
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2002 年 14 巻 1 号 p. 54-67

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抄録

要旨:酵母は厚い細胞壁を有するため、生物試料の固定に一般的に用いられる方法は適用できないので、酵母の細胞生物学的研究には、固定法の開発が必要であった。そこで、過マンガン酸カリウム(KMnO4)単独固定法、グルタルアルデヒド-KMnO4二重固定法、サンドイッチ法による急速凍結固定技術を開発し、さらに、加圧凍結法へと固定法を発展させた。この新技法を走査電子顕微鏡と結び付けて、「加圧凍結・極低温低加速電圧走査顕微鏡(HPF・ULT-LVSEM)法」を開発した。加圧凍結技法は抗原の保持を増加させるので、免疫透過電子顕微鏡学的研究に最適である。HPF・ULTLVSEM法では、細胞の鋭利な割断面を露出させることにより、短時間で細胞の走査電子顕微鏡像を得ることを可能とした。その結果、分裂酵母の細胞質分裂の際の、隔壁の形成過程を三次元的に観察できるようになった。また、分裂酵母から単離されたβ-1,6-とα-1,3-グルカンおよび市販のβ-1,3-グルカンの抗体を用いて、細胞壁グルカンの局在と隔壁形成における各種グルカンの挙動が解明され、細胞壁物質の細胞内輸送と細胞壁の合成機構について新知見を得た。さらに、隔壁形成にアクチン細胞骨格が主導的に関わっていることを立証した。

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© 日本植物形態学会
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