PLANT MORPHOLOGY
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花粉の形成・成熟過程と花粉管の伸長過程におけるオルガネラの分化-液胞系を中心として-
野口 哲子
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2006 年 18 巻 1 号 p. 19-28

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抄録

要旨:シロイヌナズナの花粉の形成・成熟過程, および, ムラサキツユクサの花粉管伸長過程における液胞系(液胞, 小胞体とゴルジ体)の分化を中心に解説する. 第一有糸分裂による生殖細胞の形成に先だってミクロ胞子内に出現する大型の液胞は,栄養細胞由来の小さな液胞の融合と吸水によって形成された. 第一有糸分裂後の未成熟な花粉では, 大型の液胞は分断して小型化した. この分断は求心的ではなく, 液胞膜が一端から他端へ陥入する独特の様式であった. 分断された液胞はエクソサイトーシスによって消失した. 開花直前の成熟花粉には, 膜で囲まれた繊維状物質を含む構造が多数出現した. この時期の花粉に, β-液胞プロセシング酵素遺伝子の発現が検出されたため, 膜で囲まれた繊維状物質を含む構造は貯蔵型の液胞であると判定した. この時期の花粉が発芽すると, 貯蔵型液胞は花粉粒の基部で大型の液胞へと変化した. 一方, 発芽しなかった花粉では, 貯蔵型液胞は酸性ホスファターゼ活性を示すリソソーム様の構造(分解型液胞)へと変化し, 細胞内成分を分解した. 花粉管基部に発達する液胞は, 吸水, および, 小胞体や脂質滴が関与する膜の供給によって体積を増大すると考えられた.

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© 日本植物形態学会
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