京都大学大学院生命科学研究科統合生命科学専攻
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2008 年 19and20 巻 1 号 p. 3-13
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命名から70年たってようやく,フロリゲンの実体がFT蛋白質であることが明らかになった.20kDaのFT蛋白質は,適切な外的要因(日長,光質,温度など)および内的要因(齢,大きさなど)による制御を受けて,葉の維管束の篩部伴細胞で発現し,篩管を通って茎頂へと輸送され,FDのような転写因子とともに花芽形成を開始させる.FT蛋白質は種子植物においては保存されており,その発現制御には,広く保存されていることが予想される「CO/FT制御モジュール」や,分類群ごとに独自に獲得された制御経路が関わる.近年,日長や温度による生活環の調節において,FT蛋白質が,ジャガイモの塊茎形成や木本植物の芽の休眠誘導と解除といった,花成以外の事象の調節にも関与していることが明らかになってきた.このことは,FT蛋白質が茎頂分裂組織の活性を調節するための汎用的な長距離シグナルである可能性を示唆する.