抄録
本研究では、様々なレベルの共同体が主体的に行う諸実践の活力の源泉となる「共同体意識」について、それが活性化される条件を探ることを企図した理論実証的な検討を行った。まず、Hegelの市民社会論に基づき、ナショナリズムと市民社会とが相互補完的・相互依存的であるとの仮説を措定した。そして、両者が相互代替的であるとの競合仮説と比較しつつ、この仮説を実証的に検討することを目的とした。この目的の下、Hegelの理論を基にして作成された、国家と市民社会に対する共同体意識を量る質問項目を用いてアンケート調査を実施した。調査データより、本仮説を支持する結果が確認された。すなわち、Hegelの理論と整合的に、ナショナリズムと市民社会に対する共同体意識が相互に補完的な関連を持つという可能性が示された.また、これらの共同体意識が、橋渡し型社会関係資本と結束型社会関係資本と関連する2因子から構成されるという可能性が示唆された。最後に、本研究の知見がまちづくりや地域づくり等に関わる公的実践において示唆する点について考察した。