抄録
地域創生の観点から地域ブランディングが注目されているが、その意味するところは論者によって異なるという問題がある。本稿では、最初に欧米のブランド論、プレイス・ブランディング論やマーケティング論などの先行研究をもとに地域ブランディングの概念整理を行った。次に、地域資源化プロセスの考え方を参照しながら、地域ブランディング形成の段階について論じた。その上で、従来の同分野の研究の多くが外部からのブランド・イメージを重視して地域外の顧客の関心・共感を得る「外の共感」を重視してきたのに対して、外部に評価されうる地域のブランド・アイデンティティを磨いていくには、地域内における「内の共感」醸成に注目が向けられるべきだと指摘した。以上の議論を実際の事例で検証するため、筆者が2016年から過去8年間にわたり東北復興支援・地域活性化の一環として取り組んできた地域連携PBLプロジェクトの中から2023年度の観光動画制作プロジェクトを取り上げ、大学生と地域の人々の双方の視点から「内の共感」醸成のメカニズムについて考察した。これらをもとに新たな「地域創発」が生まれる可能性についても言及した。最後に、地域連携PBL活動と観光促進との関係性に関する定量研究の必要性や評価指標の開発の重要性など、地域ブランディングを理論と実践の両面から探究する方向性について論じた。