抄録
本研究では、生涯未婚率の上昇による増加が予想される独身者に着目して、婚姻状況及び同居形態の違いによる居住環境の差異を把握した。独身者のうち「単身世帯」と「親と同居世帯」は共通して自家用車及び運転免許の所有率が低い。「単身世帯」の独身者は居住誘導区域内かつ公共交通の高利便な地域に居住する傾向にある。一方で、「親と同居世帯」の独身者は誘導区域外に居住する割合が高いものの、公共交通の利便性や転居意向は「単身世帯」の独身者と比べて高くない。「親と同居世帯」の独身者が親との死別を経て「単身世帯」になると考えられるが、「単身世帯」は要介護時や日頃の手助けについて頼れる人がいない等の傾向があると報告されている。つまり、「親と同居世帯」の独身者が「単身世帯」となった際に、公共交通機関の乏しい地域に居住し続けることは将来的な買い物難民や交通弱者を生み、新たな都市計画上の課題になりえる。