抄録
公共交通の維持活性化のための計画策定やきめ細やかな施策展開のためには、日々の利用者の乗車・降車(OD)を把握することは欠かせない。継続的にOD交通量を取得するシステムの構築によって、施策による利用者の動向を詳細に把握することが可能となる。都市部の鉄道では、自動改札機の通過実績データなどが利用されているが、地域鉄道では高額な設備投資などの問題から、OD把握が難しい。そこで、スマートフォンなどのBluetooth Low Energyを活用すれば、利用者ODデータを簡便かつ低コストで取得できる可能性がある。しかし、プライバシー保護の観点から、BluetoothのMACアドレスがランダムに変更される「ランダマイズ」が近年普及しており、そのデータにおいてもOD推計の手法を検討する必要がある。本研究ではランダマイズの影響を考慮したOD交通量推計手法を構築し、Bluetoothを用いて鉄道車両内の利用状況を観測したデータを用いた調査を行った。加えて同時に実施した乗降調査による検証を行った。その結果、地域鉄道においてランダマイズの影響下であっても、利用者OD推計を行える可能性が示された。また利用者ODデータの活用方策について検討を行い、需要変動の予測による列車増結の判断や、イベント開催による集客予測への活用を提案した。