実践政策学
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「地方性」が育む開発事業推進力及びその活性化要件に関する研究
満洲開発を例として
小幡 敏也藤井 聡
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2025 年 11 巻 2 号 p. 217-234

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抄録
満洲開発事業が活性化した背景を、地方(満洲)と中央(日本内地)の相互作用という観点から分析すると、彼の地の開発が遠心性(独立・自律的な地方性)と求心性(中央への従属・連携)のせめぎ合いであったと見ることができる。満洲は日本の実質的な支配下に置かれつつも、地理的隔絶と建国理念に支えられて一定程度独自の地方性=遠心性を保持し、新天地としての実験的性格を担った。一方で、資本・技術・制度設計の多くは内地に依存し、日満ブロック経済の形成に象徴されるように、中央への求心性も不可欠であった。これらの遠心性と求心性は対立するのではなく、相互補完的な関係を構成し、開発推進の原動力として作用した。また、新天地としての満洲は、内地で閉塞を感じていた技術者・革新官僚に挑戦と大望を許す空間を提供し、若手人材の登用や大胆な制度・都市計画等を実施できる環境を生み出した。他方、独自の地方的自負は集団の規律や凝集性を高め、建設業者の“土建報国”に象徴されるような開発推進力を導いた。こうした地方としての満洲開発は、岸信介等よる計画・統制経済の逆輸入に見られるように、中央の政策革新にも影響を及ぼした。結論として、満洲開発の活性化は、地方性の昂進と中央統制の調和という循環的関係によって支えられたものであり、この構造は現代の国土開発にも通底する一般的条件を示唆するものである。
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