抄録
本研究は、国家アイデンティティがムスリムに対するイメージとムスリムに対する脅威認知を規定し、それらがムスリムに対する受容的態度を規定するという仮説モデルを構成し、その妥当性を検証することを目的とした。これまでの研究では、ムスリムに対する受容的態度は、ムスリムイメージおよび脅威認知によって規定されることが一貫して示されてきたが、それらのムスリムイメージおよび脅威認知がどのような要因によって規定されるかはいまだ検討が十分に行われてこなかった。そこで本研究では、イメージおよび脅威認知は、受容的態度を規定する一方、「国家への所属意識」と定義される国家アイデンティティによって規定されるとするモデルを仮定し、共分散構造分析によって検証した。その結果、第一に、国家アイデンティティは、愛国心、国家主義、国家的遺産への愛着、多文化主義、他国への援助志向の5因子によって構成されることが示された。第二に、ムスリムイメージおよび脅威認知は国家アイデンティティと強く関連することが示された。具体的には、脅威認知と愛国心および国家的遺産への愛着の間にのみ関連が見られなかった以外は、すべての変数間に有意な関連が見られた。第三に、受容的態度は、先行研究と同様に、ムスリムイメージおよび脅威認知によって規定されると同時に、国家アイデンティティの下位尺度である多文化主義によっても規定されることが示された。