抄録
日本では、小泉内閣以降,新自由主義に基づく政策が継続して実施されてきているが、その帰結として,デフレ不況の深刻化や格差拡大、国力の低下などが指摘されている。民主主義を採用する日本においては、国民の新自由主義に対する支持意識の水準が政策決定に影響を及ぼすものと考えられるため,新自由主義に対する支持意識と規定因の因果関係に対して実証的知見を蓄積することとした。本研究ではまずSchelerの議論に基づきルサンチマンの概念を定義し、公的主体に対するルサンチマンが新自由主義に対する支持意識に影響を及ぼすという因果構造仮説を措定し,質問紙調査と共分散構造分析によって仮説を検証した。その結果、日本には公的主体に対するルサンチマンが存在し、新自由主義に対する支持意識に影響を及ぼしており、とりわけ公的主体に対する否定的な感情が新自由主義支持意識に最も大きな影響を及ぼしている可能性が示唆された。また、新自由主義化に伴う格差拡大が社会構造としてルサンチマンを増長する可能性があり、公的主体へのルサンチマンと新自由主義化の間に循環構造が存在する可能性が示唆された。