抄録
我が国では人口減少・少子高齢化の進行に伴い、空き家問題や商業施設の撤退、財政状況の悪化など、新たな都市問題が生じている。こうした中、少子高齢化や住宅の老朽化を包含した「都市の老い」と呼ばれる概念が近年整理され、都市の老いと地価形成に関する実証的分析などもなされている。本研究では都市の老いを地域政策のなかで実践的に評価できるようその定量化を図り、特性が類似した都市ごとに都市の老いと住宅地平均地価とがどのような経年的変遷を辿ったのかを、分かりやすい形で観察・提示することを目的とする。そのため、本研究では学術論文における様々な議論より都市問題の抽出を行うとともに、これらの代理指標に基づいて因子分析を行うことで、都市の老いを定量化した。さらに都市の老いと住宅地平均地価に関して、その変遷を都市特性に応じた類型に基づいて追跡を行っている。その結果、人口が集積する関東周辺においても老いが深刻な都市は多く、都市の老いという現象が喫緊の課題ということが明らかになった。また、全体の大きな流れとして都市の老いの進行が進むにつれて住宅地平均地価が下落する傾向があり、類型ごとに都市の老いと住宅地平均地価を観察すると、地方都市のみならず大都市郊外の都市でも、老いとともに地価の下落が生じており、大都市中心部とそれ以外の都市で地価に格差が生じていることが明らかとなった。