抄録
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対策として、日本では2020年4月から5月に1度目、2021年1月から3月にかけて2度目の緊急事態宣言が発出され、これに合わせる形で飲食店の営業時間短縮、不要不急の移動の自粛、テレワークの推進などが行われた。緊急事態宣言のように社会活動の大幅な抑制を目指した政策は、経済的な損失を始めとして副作用を伴い得るものであるため、それがどの程度の効果を持つものであるかを見極めた上で、適切に実施される必要がある。本研究では、2021年1月から地域限定で発出された2度目の緊急事態宣言が感染拡大を抑制する効果に着目し、2020年12月27日~2月14日までの新規感染者数(2021年1月10日から2月28日までの報告数を14日間遡及させたもの)から導いた感染増加速度及び実効再生産数を従属変数とし、対象地域の内外と宣言の前後の二つを要因とする反復測定分散分析を行った。その結果、宣言の前後及び対象地域の内外で統計的に有意な差がなく、両者の交互作用も見られず、2度目の緊急事態宣言が感染を抑制したと言うことは統計学的に出来ないという結果が得られた。