実践政策学
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緑の基本計画に流域圏の視点を導入することの意義と課題
荒金 恵太一ノ瀬 友博
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2021 年 7 巻 2 号 p. 241-266

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抄録
本研究では、一つの行政区域の範囲を超える広域的なスケールの流域圏の視点を緑の基本計画に導入することの意義と課題について考察することを目的として、2019 年の台風第 19 号(令和元年東日本台風)で総合治水対策の効果がみられた鶴見川流域の事例を対象に、ヒアリング調査や現地調査等により、総合治水対策に資する公園整備や緑地保全の取組の展開経緯等に関する情報を収集・整理した。その結果、鶴見川流域における総合治水対策の取組は、国土交通省関東地方整備局、東京都、神奈川県、横浜市、川崎市、町田市、稲城市の連携によって、40 年以上の長きにわたり取組が展開され、その一環で遊水地や調整池の機能を有する公園も整備されてきたことや、それらの遊水地や調整池の機能を有する公園は、2019 年の台風第 19 号(令和元年東日本台風)の発生の際に、水位を低減させる役割を担っていたことが確認された。生物多様性保全についても、1998年に生物多様性保全モデル地域計画(鶴見川流域)が全国に先駆けてとりまとめられ、流域全体の中での保全すべき緑地(生物多様性重要配慮地域)が17 箇所抽出されていた。生物多様性保全モデル地域計画(鶴見川流域)の内容は、後に策定された鶴見川流域水マスタープランや、各自治体の緑の基本計画の内容とも連携していた。今後、気候変動に伴う災害リスクの増大が懸念され、河川・下水道による対策のみならず、雨水貯留浸透機能を有する公園整備や緑地保全による対策も含めた流域治水の推進や、同じ流域圏内の自治体間の連携強化が一層重要となっている中、緑の基本計画においても流域圏の視点を導入することの有効性や実現可能性が示された。
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