抄録
増加の一途を辿る我が国の医療費は財政を強く圧迫しており、その背景に「過剰医療」が存在しているのではないかとの指摘が近年の報道や研究の中に見られる。しかし、各都道府県の医療費に大きな格差が存在する一方で、それが住民健康度とは相関しないことや、むしろ病床数と強く相関することから、供給が需要を生み出している懸念が示唆されているものの、実証分析の蓄積は未だ十分ではなく、過剰医療の有無等を直接的に確認する研究はほとんど行われていない。そこで本研究では、年齢調整済み一人当たり医療費の上位5県と下位5県の病院に勤務する医師を対象にアンケート調査を実施し、診療態度、行為、病院経営方針における過剰医療傾向を測定した上で、その傾向が医療費の高い地域でより強いのか否かを確認した。その結果、医学上ではなく経営上の理由で求められる検査や治療が存在すると回答した医師や、勤務先の病院が患者の幸福を最重視してはいないと回答した医師が一定数存在したほか、医療費が高い地域では、病院経営において利益の最大化や入院患者の確保、訴訟・クレーム回避が重視され、過剰な医療がより行われやすい傾向にあることが示唆された。